うべの時空代数

気になる点がありましたらコメントくださいm(_ _)m

スピノル(没)

\def\ou#1#2#3{\overset{#2}{\underset{#3}{#1}}}\def\os#1#2{\overset{#2}{#1}}\def\diff{\mathrm{d}}\def\biff{\mathrm{b}}\def\D{\mathrm{D}}\def\B{\mathrm{B}}\def\p{\mathrm{p}}\def\pu#1{\underset{#1}{\mathrm{p}}}\def\p{\mathrm{p}}\def\qu#1{\underset{#1}{\mathrm{q}}}\def\G#1#2{\overset{#1}{\underset{#2}{\Gamma}}}\def\abs#1{\lvert#1\rvert}\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}
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\def\kket#1{\mathinner{\left.\left|{#1}\right\rangle\!\right\rangle}}
\def\bbrakket#1#2{\mathinner{\left\langle\!\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle\!\right\rangle}}
※本議論で重力は無視する.Dirac行列は4\times4の表現でスピノルも4成分とする.また正規直交基底における計量は(-,\ +,\ +,\ +)とする.
Dirac行列は不変スピノテンソルつまり1つの座標に関する添字と2つのスピノルに関する添字が打ち消されるLorentz不変な定数行列として扱うのがふつうである.しかしDirac行列を使って電磁場の数式やYang-Mills項を記述すると各文字の定義は省略するが
J+F\D=0
m\dot{u}+QF\vee u=0
L_{\mathrm{EM}}=\frac{1}{2}F\vee F+J\vee A
L_{\mathrm{YM}}=\mathrm{Tr}(F\vee F)
といった感じでかなり簡潔な記述を可能にする.ここで例えばAは4元ポテンシャルであるがDirac行列を基底としておりMinkowski時空の基底にDirac行列の積の規則を与えたとみることができる.となるとDirac行列はベクトルの基底の取り換え規則に従わなければならないとするのが自然である.よってLorentz変換するDirac行列によるDirac場の記述を考えなければならない.これが本題である.
本題に入る前にこれを考える難しさを説明したい.Dirac行列がベクトルの基底の取り換え規則に従うならDirac行列のLorentz変換はスピノルの変換行列Sで表現できて
\gamma'_\mu=\Lambda_\mu^\nu\gamma_\nu=S^{-1}\gamma_\mu S
となる.具体例は
\gamma'_\mu=\exp\left(-\frac\Theta2\right)\gamma_\mu\exp\left(\frac\Theta2\right)\\
\gamma'_\mu=-R^{-1}\gamma_\mu R
である.上の式は本義Lorentz変換,下の式は4次元時空の可逆な任意方向の鏡映変換であるが,鏡映変換にはマイナスがついて形が違ってしまっている.本義Lorentz変換があるので形が同じ時間反転と空間反転の変換行列を探せば十分なのかもしれないが時空の次元が4と偶数なので最高次数つまり4次の非0な任意の元\upsilonを用いて
\gamma'_\mu=(\upsilon R)^{-1}\gamma_\mu(\upsilon R)
とすれば鏡映変換を挟んだ形で表現できる.よって
S=\begin{cases}\exp\left(\frac\Theta2\right)&\mbox{本義Lorentz変換};\\\upsilon R&\mbox{鏡映変換}.\end{cases}
とまとまる.これほど簡潔にまとめることができるのでテンソルLorentz変換はスピノルのLorentz変換から来ているものだと解釈してもよいのかもしれない.しかし変換行列Sは一般にHermite行列でもユニタリ行列でもなんでもないためLorentz変換Dirac行列のHermite性が保存されない.Dirac共役を使おうにしても\gamma_0が変換されて使い物にならない.つまり行のスピノルと列のスピノルの間には従来のような関係はなく別々で考えるしかなさそうなのだ.
さて本題に入ろう.スピノルであるが行スピノルと列スピノルがあってそれぞれ
\bbra{a'}=\bbra{a}S
\kket{a'}=S^{-1}\kket{a}
という変換がされるものとする.ここで注意しておきたいのはSがユニタリでないことからわかるようにブラケットにHermite共役などの関係はないということだ(区別するために二重にしておいた).スピノルの基底を用意しよう.行スピノルと列スピノルの基底をそれぞれ
\bbra{\beta i},\ \kket{\beta i}
とする.スピノルはこれらの基底の複素数の線形結合で表せて成分は複素数になる.これらはそれぞれ行スピノルと列スピノルの変換に従う.スピノルの基底がスピノルの変換に従うということは
\bbra{a}:=\displaystyle\sum_i\bbra{\beta i}a_i\\
\bbra{a'}=\bbra{a}S=\displaystyle\sum_i\bbra{\beta i}Sa_i=\displaystyle\sum_i\bbra{\beta' i}a_i
テンソルと違って(基底に対する係数という意味の)成分はそのままであり,変換後で別のスピノルになる(テンソルは基底と成分両方変換されそれぞれの変換係数の縮約がKrineckerのデルタになることで打ち消されてテンソル自体は不変となる).誤解を招きかねないので補足しておくがここで考えている変換はLorentz変換であり,スピノルの基底の取り換えは別でスピノル自体を変化させないようにテンソルの変換同様基底の変換係数に対し成分の変換係数が打ち消されるように成分を書き換えなければならない.さてスピノルの基底は線形独立ならなんでもいいのだが
\bbrakket{\beta i}{\beta j}=\delta_{i,\ j}
という条件を課す.これはLorentz不変な式となっている.この条件によって
\bbrakket{a}{b}=\displaystyle\sum_{i,\ j}a_ib_j\bbrakket{\beta i}{\beta j}=\displaystyle\sum_{i,\ j}a_ib_j\delta_{i,\ j}=\displaystyle\sum_ia_ib_i
と計算される.成分はLorentz不変なのでブラケットはLorentz不変である.さらに
\displaystyle\sum_i\kket{\beta i}\bbra{\beta i}=I_4
という関係が成り立ち,これもLorentz不変な等式である.またブラとケットの関係に
\bbra{a}=\displaystyle\sum_i\bbra{\beta i}a_i\\
\rightarrow\kket{a}=\displaystyle\sum_ia_i^\ast\kket{\beta i}
という関係を持たせる.この条件によって
\bbrakket{a}{a}=\displaystyle\sum_i\abs{a_i}^2
と計算され
\bbrakket{a}{b}=\bbrakket{b}{a}^\ast
という性質を持つ.このようなスピノルを使ってDirac場を記述しようというのが狙いである.そのためにまずDirac行列の性質を考える.Dirac行列は
\frac{\gamma_\mu\gamma_\nu+\gamma_\nu\gamma_\mu}{2}=g_{\mu\nu}I_4
を満たし,特に正規直交基底を取ると計量はMinkowski計量となり
\frac{\gamma_\mu\gamma_\nu+\gamma_\nu\gamma_\mu}{2}=\eta_{\mu\nu}I_4
を満たす.正規直交基底では簡単な計算により添字が0のDirac行列の固有値i,\ -iが2つずつでそれ以外は1,\ -1が2つずつであり,トレースはすべて0で行列式はすべて1となる.またDirac行列は一般にHermite性は持たない(有名な表示によってHermite性を持つようにしているだけである).重力は考えないこととするが特殊相対論的な議論でも数式は正規直交基底でなくても成り立つはずなのでDirac行列の正規直交性は仮定しない.Dirac行列は対角化可能であるため中嶋氏が示した定理より
\bbra{L\mu n}\gamma_\mu=\bbra{L\mu n}\lambda_{\mu n}\\
\gamma_\mu\kket{R\mu n}=\lambda_{\mu n}\kket{R\mu n}\\
\bbrakket{L\mu n}{R\mu m}=\delta_{n,\ m}\\
\displaystyle\sum_n\kket{R\mu n}\bbra{L\mu n}=I_4
を満たすように固有行,固有列を取ることができ,
\gamma_\mu=\displaystyle\sum_n\lambda_{\mu n}\kket{R\mu n}\bbra{L\mu n}
を満たす.固有行,固有列はそれぞれ行スピノル,列スピノルとすれば固有値はLorentz不変であるためLorentz変換後のDirac行列の固有行,固有列はスピノルのLorentz変換したものである.またスピノルであるため
\bbra{L\mu n}=\displaystyle\sum_i\bbra{\beta i}L_{\mu n i}
\kket{R\mu n}=\displaystyle\sum_iR_{\mu n i}\kket{\beta i}
と展開することができる.成分の関係は固有スピノルの性質から
\displaystyle\sum_iL_{\mu n i}R_{\mu m i}=\delta_{n,\ m}\\
\displaystyle\sum_{n,\ i,\ j}R_{\mu n i}L_{\mu n j}\kket{\beta i}\bbra{\beta j}=I_4
が成り立つ.

予想・方針

ここまで書いたがその先が滞って進まないので,予想と方針を書く.
ラグランジアン
L=\bbra{\psi}\frac{\D-\B}{2}\kket{\psi}+m\bbrakket{\psi}{\psi}
ラグランジュ方程式は中嶋氏が示したものより
\frac{\partial L}{\partial \kket{\psi}}-\frac{\partial L}{\partial \B\kket{\psi}}\D=0\\
\frac{\partial L}{\partial \bbra{\psi}}-\B\frac{\partial L}{\partial\bbra{\psi}\D}=0
Dirac方程式は
\bbra{\psi}\left\{\D+m\right\}=0\\
\left\{m-\B\right\}\kket{\psi}=0
のような形になるのではないかと思う.DとBはそれぞれ右,左にある関数に作用するDirac作用素である.方程式はLorentz不変な形になっている.これらがDirac場を表しているか云々の前にラグランジアンが実数になっているかが問題である.質量項はブラケットのここでの定義より自明に実数であるが運動項が非自明である.運動項をスピノルの基底で展開すると
\bbra{\psi}\frac{\D-\B}{2}\kket{\psi}=\displaystyle\sum_{\mu,\ i,\ j}\frac{\psi_j^\ast\partial^\mu\psi_i-\psi_i\partial^\mu\psi_j^\ast}{2}\bbra{\beta i}\gamma_\mu\kket{\beta j}
ブラケット部分を計算してみる.
\bbra{\beta i}\gamma_\mu\kket{\beta j}=\displaystyle\sum_n\lambda_{\mu n} L_{\mu ni}R_{\mu nj}
よって
\bbra{\psi}\frac{\D-\B}{2}\kket{\psi}=\displaystyle\sum_{\mu,\ i,\ j,\ n}\frac{\psi_j^\ast\partial^\mu\psi_i-\psi_i\partial^\mu\psi_j^\ast}{2}\lambda_{\mu n} L_{\mu ni}R_{\mu nj}
これが全微分項などの不定性を除いて複素共役が等しいことが示せればよい.がわからない.
あと考えた発想はブラとケットの変換に関してHermite共役の類似として
\bbra{a}=\kket{a}^\ddagger\\
\kket{a}=\bbra{a}^\ddagger
みたいなのを使って探るのもいいかもしれない.LとRにこの共役は持たせられないのだろうかなど考えている.
\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}
\def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}}
\def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}}
Dirac行列を時空代数の1次基底とみて本義ローレンツ変換
\gamma'=\exp(-\frac{\Theta}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})\\
\Theta:=\eta\gamma_0h+\theta\gamma_1\gamma_2\gamma_3c\\
h:=
 h_1\gamma_1
 +h_2\gamma_2
 +h_3\gamma_3\mid h^2=1\\
c:=
 c_1\gamma_1
 +c_2\gamma_2
 +c_3\gamma_3\mid c^2=1\\
\eta,\ \theta\in\{\zeta\mid\zeta\in\mathbb R\land\zeta\geq0\}
と表されることとする.符号は(-,\ +,\ +,\ +)とし\gamma_0固有値\pm iの反Hermite行列,\gamma_i\ (i=1,\ 2,\ 3)固有値\pm1のHermite行列とする.基本的にDirac表現(のi倍)を考える(カイラル表現だと時空代数の1次基底にならないかも?).
またDiracピノルの本義ローレンツ
\bra{\psi'}=\bra{\psi'}\exp(\frac{\Theta}{2})\\
\ket{\psi'}=\exp(-\frac{\Theta}{2})\ket{\psi}
と表されるものとする.ブラつまり行をメインとして考える.(取り急ぎこのケットがどういう共役かは決めないでおく)
さて本記事の目的はDiracピノルから時空代数を構成する方法を考えることであり,具体的にはDirac行列をDiracピノルの積や和で表現すことである.
Dirac表現のDirac行列ではDiracピノルは4成分の複素数となり,4個の複素係数の線形結合で表せばいいためスピノルにおける基底のようなもの4個を探せばいい.疑わしいのはDirac行列の固有列・行である.2個の固有値に対しそれぞれ2個の固有行があるため個数的には適している.さてDirac行列はHermite行列,反Hermite行列であるため固有値\lambda_i,固有行\bra{a_i},ブラケットをHermite共役として
\gamma=\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{a_i}\bra{a_i}
と表される.この\bra{a_i}がスピノルの本義Lorentz変換に従うと仮定して,Dirac行列の本義Lorentz変換が導けるかが問題である.言い換えれば\ket{a_i}がスピノルの本義Lorentz変換を満たしているかという命題に等価である.
\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{a_i}\bra{a_i}\rightarrow\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{a'_i}\bra{a'_i}=\displaystyle\sum_i\lambda_i\left(\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\right)^\dagger\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\\
=\displaystyle\sum_i\lambda_i\left(\exp(\frac{\Theta}{2})\right)^\dagger\bra{a_i}^\dagger\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\\
=\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{\eta\gamma_0h-\theta\gamma_1\gamma_2\gamma_3c}{2})\ket{a_i}\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\\
=\exp(\frac{\eta\gamma_0h-\theta\gamma_1\gamma_2\gamma_3c}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})\neq\gamma'
よってDirac行列の固有行のHermite共役はスピノルではなく,そもそもDirac行列の固有行がスピノルの本義Lorentz変換を満たすという仮定が間違っている.しかしスピノルの本義Lorentz変換を満たすものとしてこの数式の意味を考えてみる.そこで左から\gamma_0をかけてみよう.
\gamma_0\exp(\frac{\eta\gamma_0h-\theta\gamma_1\gamma_2\gamma_3c}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})=\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})\\
=\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\exp(\frac{\Theta}{2})\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})=\gamma_0'\gamma'
つまり
\gamma_0\gamma=\displaystyle\sum_i\lambda_i\gamma_0\ket{a_i}\bra{a_i}\rightarrow\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\ket{a_i}\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})=\gamma'_0\gamma'
である.Hermite共役でなくDirac共役を使えばよさそうである.またDirac行列の固有行でなく,\gamma_0\gammaの固有行から出発したらよさそうだ.\gamma_0\gammaはHermite行列なので固有値\lambda_i,固有行\bra{b_i}として
\gamma_0\gamma=\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{b_i}\bra{b_i}
これを左から-\gamma_0かける.
\gamma=-\displaystyle\sum_i\lambda_i\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}
これを本義Lorentz変換すると,
\gamma=-\displaystyle\sum_i\lambda_i\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}\rightarrow-\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})=\gamma'
となる.しかしこれは\gamma_0Lorentz変換してないため変換後のDirac行列に変換前のDirac行列が入っていることになる.Diracピノルから時空代数を構成することはできるのだろうか.いろいろ考えてみたが求めているものは見つからなかった.
7/3追加
妥協すると
\gamma_0\gamma=\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{b_i}\bra{b_i}\\
\gamma=-\displaystyle\sum_i\lambda_i\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}
ピノルだけLorentz変換して
\gamma'=-\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})=\exp(-\frac{\Theta}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})\\
\gamma_0'\gamma'=\exp(-\frac{\Theta}{2})\gamma_0\exp(\frac{\Theta}{2})\left\{-\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\right\}=\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(-\frac{\Theta}{2})\ket{b_i}\bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})
\exp(-\frac{\Theta}{2})\ket{b_i},\ \bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})をそれぞれ\ket{b'_i},\ \bra{b'_i}とすれば
\gamma_0'\gamma'=\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{b'_i}\bra{b'_i}
とできるがこれはもはや\gamma_0'\gamma'の固有列・行でもないしHermite共役でもない.最初の座標を特別視していて相対論的な思想に反しているような気がしてならない.ベクトルの基底としてのDirac行列と不変スピノテンソルとしてのDirac行列の二つがあってそれらを駆使すればいいのかもしれない.
\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}
\def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}}
\def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}}
Dirac行列を時空代数の1次基底とみて本義ローレンツ変換
\gamma'=\exp(-\frac{\Theta}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})\\
\Theta:=\eta\gamma_0h+\theta\gamma_1\gamma_2\gamma_3c\\
h:=
 h_1\gamma_1
 +h_2\gamma_2
 +h_3\gamma_3\mid h^2=1\\
c:=
 c_1\gamma_1
 +c_2\gamma_2
 +c_3\gamma_3\mid c^2=1\\
\eta,\ \theta\in\{\zeta\mid\zeta\in\mathbb R\land\zeta\geq0\}
と表されることとする.符号は(-,\ +,\ +,\ +)とし\gamma_0固有値\pm iの反Hermite行列,\gamma_i\ (i=1,\ 2,\ 3)固有値\pm1のHermite行列とする.基本的にDirac表現(のi倍)を考える(カイラル表現だと時空代数の1次基底にならないかも?).
またDiracピノルの本義ローレンツ
\bra{\psi'}=\bra{\psi'}\exp(\frac{\Theta}{2})\\
\ket{\psi'}=\exp(-\frac{\Theta}{2})\ket{\psi}
と表されるものとする.ブラつまり行をメインとして考える.(取り急ぎこのケットがどういう共役かは決めないでおく)
さて本記事の目的はDiracピノルから時空代数を構成する方法を考えることであり,具体的にはDirac行列をDiracピノルの積や和で表現すことである.
Dirac表現のDirac行列ではDiracピノルは4成分の複素数となり,4個の複素係数の線形結合で表せばいいためスピノルにおける基底のようなもの4個を探せばいい.疑わしいのはDirac行列の固有列・行である.2個の固有値に対しそれぞれ2個の固有行があるため個数的には適している.さてDirac行列はHermite行列,反Hermite行列であるため固有値\lambda_i,固有行\bra{a_i},ブラケットをHermite共役として
\gamma=\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{a_i}\bra{a_i}
と表される.この\bra{a_i}がスピノルの本義Lorentz変換に従うと仮定して,Dirac行列の本義Lorentz変換が導けるかが問題である.言い換えれば\ket{a_i}がスピノルの本義Lorentz変換を満たしているかという命題に等価である.
\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{a_i}\bra{a_i}\rightarrow\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{a'_i}\bra{a'_i}=\displaystyle\sum_i\lambda_i\left(\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\right)^\dagger\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\\
=\displaystyle\sum_i\lambda_i\left(\exp(\frac{\Theta}{2})\right)^\dagger\bra{a_i}^\dagger\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\\
=\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{\eta\gamma_0h-\theta\gamma_1\gamma_2\gamma_3c}{2})\ket{a_i}\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\\
=\exp(\frac{\eta\gamma_0h-\theta\gamma_1\gamma_2\gamma_3c}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})\neq\gamma'
よってDirac行列の固有行のHermite共役はスピノルではなく,そもそもDirac行列の固有行がスピノルの本義Lorentz変換を満たすという仮定が間違っている.しかしスピノルの本義Lorentz変換を満たすものとしてこの数式の意味を考えてみる.そこで左から\gamma_0をかけてみよう.
\gamma_0\exp(\frac{\eta\gamma_0h-\theta\gamma_1\gamma_2\gamma_3c}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})=\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})\\
=\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\exp(\frac{\Theta}{2})\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})=\gamma_0'\gamma'
つまり
\gamma_0\gamma=\displaystyle\sum_i\lambda_i\gamma_0\ket{a_i}\bra{a_i}\rightarrow\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\ket{a_i}\bra{a_i}\exp(\frac{\Theta}{2})=\gamma'_0\gamma'
である.Hermite共役でなくDirac共役を使えばよさそうである.またDirac行列の固有行でなく,\gamma_0\gammaの固有行から出発したらよさそうだ.\gamma_0\gammaはHermite行列なので固有値\lambda_i,固有行\bra{b_i}として
\gamma_0\gamma=\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{b_i}\bra{b_i}
これを左から-\gamma_0かける.
\gamma=-\displaystyle\sum_i\lambda_i\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}
これを本義Lorentz変換すると,
\gamma=-\displaystyle\sum_i\lambda_i\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}\rightarrow-\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})=\gamma'
となる.しかしこれは\gamma_0Lorentz変換してないため変換後のDirac行列に変換前のDirac行列が入っていることになる.Diracピノルから時空代数を構成することはできるのだろうか.いろいろ考えてみたが求めているものは見つからなかった.
7/3追加
妥協すると
\gamma_0\gamma=\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{b_i}\bra{b_i}\\
\gamma=-\displaystyle\sum_i\lambda_i\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}
ピノルだけLorentz変換して
\gamma'=-\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})=\exp(-\frac{\Theta}{2})\gamma\exp(\frac{\Theta}{2})\\
\gamma_0'\gamma'=\exp(-\frac{\Theta}{2})\gamma_0\exp(\frac{\Theta}{2})\left\{-\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(\frac{-\Theta}{2})\gamma_0\ket{b_i}\bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})\right\}=\displaystyle\sum_i\lambda_i\exp(-\frac{\Theta}{2})\ket{b_i}\bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})
\exp(-\frac{\Theta}{2})\ket{b_i},\ \bra{b_i}\exp(\frac{\Theta}{2})をそれぞれ\ket{b'_i},\ \bra{b'_i}とすれば
\gamma_0'\gamma'=\displaystyle\sum_i\lambda_i\ket{b'_i}\bra{b'_i}
とできるがこれはもはや\gamma_0'\gamma'の固有列・行でもないしHermite共役でもない.最初の座標を特別視していて相対論的な思想に反しているような気がしてならない.ベクトルの基底としてのDirac行列と不変スピノテンソルとしてのDirac行列の二つがあってそれらを駆使すればいいのかもしれない.
\def\ou#1#2#3{\overset{#2}{\underset{#3}{#1}}}\def\os#1#2{\overset{#2}{#1}}\def\diff{\mathrm{d}}\def\biff{\mathrm{b}}\def\D{\mathrm{D}}\def\B{\mathrm{B}}\def\p{\mathrm{p}}\def\pu#1{\underset{#1}{\mathrm{p}}}\def\p{\mathrm{p}}\def\qu#1{\underset{#1}{\mathrm{q}}}\def\G#1#2{\overset{#1}{\underset{#2}{\Gamma}}}\def\abs#1{\lvert#1\rvert}\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}
\def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}}
\def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}}\def\bbra#1{\mathinner{\left\langle\!\left\langle{#1}\right|\right.}}
\def\kket#1{\mathinner{\left.\left|{#1}\right\rangle\!\right\rangle}}
\def\bbrakket#1#2{\mathinner{\left\langle\!\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle\!\right\rangle}}
いろいろ悩んでいたがもうスピノルの変換則自体変えてしまえばいいのではと考えた.テンソルLorentz変換する基底で考えた時空代数は成分こそLorentz変換するがテンソル自体,時空代数自体は基底と成分の変換係数が打ち消しあい不変である.それと同じでスピノルにも基底と成分にそのような構造を与えてやればいいのではと考えた.スピノルの基底は
\bbra{\beta_i},\ \kket{\beta_i}\\
\bbrakket{\beta_i}{\beta_j}=\delta_{ij}
を考え
\bbra{\beta'_i}=\bbra{\beta_i}S\\
\kket{\beta'_i}=S^{-1}\kket{\beta_i}
と変換されるとする.そしてスピノルは
\bbra{\psi}=\bbra{\beta_i}\psi_i\\
\kket{\phi}=\phi_i\kket{\beta_i}
と定義されLorentz変換に対し
\bbra{\psi'}=\bbra{\psi}\\
\kket{\phi'}=\kket{\phi}
であるとすることを考える.ここで
\bbra{\beta'_i}=\bbra{\beta_i}S=\bbra{\beta_j}T_{ij}\\
\kket{\beta'_i}=S^{-1}\kket{\beta_i}=U_{ji}\kket{\beta_j}
を満たす変換係数を考える.U_{ji}
\bbrakket{\beta'_i}{\beta'_j}=\bbra{\beta_i}SS^{-1}\kket{\beta_j}=\delta_{ij}
であるため
\bbrakket{\beta'_i}{\beta'_j}=\bbra{\beta_k}T_{ik}U_{lj}\kket{\beta_l}=T_{ik}U_{lj}\delta_{kl}=T_{ik}U_{kj}\\
T_{ik}U_{kj}=\delta_{ij}
を満たす.これにU_{li}をかける.
U_{li}T_{ik}U_{kj}=U_{li}\delta_{ij}\\
U_{li}T_{ik}U_{kj}=U_{lj}\\
T_{ik}U_{li}=\delta_{kl}
まとめると
T_{ik}U_{kj}=T_{ki}U_{jk}=\delta_{ij}
これより
\psi'_i=U_{ji}\psi_j\\
\phi'_i=\phi_jT_{ij}
とすると
\bbra{\psi'}=\bbra{\psi}\\
\kket{\phi'}=\kket{\phi}
が満たされる.
Dirac行列は対角化可能であるため
\bbra{L_{\mu n}}\gamma_\mu=\bbra{L_{\mu n}}\lambda_{\mu n}\\
\gamma_\mu\kket{R_{\mu n}}=\lambda_{\mu n}\kket{R_{\mu n}}\\
\bbrakket{L_{\mu n}}{R_{\mu m}}=\delta_{nm}\\
\displaystyle\sum_n\kket{R_{\mu n}}\bbra{L_{\mu n}}=I_4
を満たすように固有行,固有列を取ることができ,
\gamma_\mu=\displaystyle\sum_n\lambda_{\mu n}\kket{R_{\mu n}}\bbra{L_{\mu n}}
を満たす.固有値はLorentz不変である.固有列固有行はスピノルではなくスピノルの基底の変換に従い,スピノルの基底の取り換えと考えることもできるため
\bbra{L_{\mu n}}=\displaystyle\sum_i\bbra{\beta_i}L_{\mu n i}
\kket{R_{\mu n}}=\displaystyle\sum_iR_{\mu n i}\kket{\beta_i}
と展開することができる.係数はスピノルの成分ではないためLorentz不変である.係数の関係は固有スピノルの性質から
\displaystyle\sum_iL_{\mu n i}R_{\mu m i}=\delta_{nm}\\
\displaystyle\sum_{n,\ i,\ j}R_{\mu n i}L_{\mu n j}\kket{\beta_i}\bbra{\beta_j}=I_4
が成り立つ.
さてDirac方程式であるが正当性は置いといて
\bbra{\psi}\{\D+m\}=0
を考えよう.これは一文字一文字がLorentz不変であるため方程式がLorentz不変であることは自明である.
\bbra{\psi'}\{\D-m\}=0

\bbra{\psi'}=\bbra{\psi}\gamma_5
を考えれば等価である.つぎに
\{\B+m\}\kket{\phi}=0
が等価な場合の\bbra{\psi},\ \kket{\phi}の関係を考えよう.複素数の足し算掛け算の式に変換すると
\partial^\mu\psi_i\displaystyle\sum_n\lambda_{\mu n}R_{\mu ni}L_{\mu nj}=-m\psi_j\\
\partial^\mu\phi_i\displaystyle\sum_n\lambda_{\mu n}R_{\mu nj}L_{\mu ni}=-m\phi_j
最初から重力は考えてないがあとで4脚場とかで変換することを考えてとりあえず正規直交基底を考える.確認した限りカイラル表現やカイラル表現をLorentz変換したものではLRは等しいため常に等価である.
さて問題はラグランジアンであるが
L=\bbra{\psi}\frac{\D-\B}{2}\kket{\phi}+m\bbrakket{\psi}{\phi}
の形をしているのではと予想する.これはLorentz不変な形になっている.しかし実数でない.これは虚部だけ抜き出せばいいのか全微分項で実数にできるのか,何か思いついたら教えてください.