ベクトル空間からその係数体への線形写像を線形汎関数といいその集合を双対ベクトル空間ないしは単に双対空間といいその元を余ベクトル,共変ベクトル,コベクトル,一次形式,1-形式…という. |
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これが双対空間辺りの定義で間違いない.要するに余ベクトルとはベクトル引数スカラー戻り値の写像であるということだ.私は全く多読家とは程遠い存在なので偉そうなことは言えないのだがしかし世に出回っている理工学書のうち物理学書や工学書にみられる説明に,ここでは石井俊全の「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」をもとに書くが
n次元ベクトル空間,がある.の基底をからに取り換えるときには,の基底をからに取り換え,これらの間に,が成り立つとき,をの双対空間,をの双対基底,をの双対基底という. |
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とある.んんん.これが数学的に同値であろうか.私には全く別物に見える.この文には「双対基底」とあるが双対基底は双対空間の基底であるため最初の定義に基づけばもちろん線形汎関数であり
ベクトル空間とその基底が与えられたとき,その双対空間の部分空間でを満たすもののことを双対集合といい,が有限次元のとき双対集合は双対空間を張り双対基底という. |
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と定義される.これも全然違う.ただひとつ石井俊全の定義を擁護する考え方が思いついた.これからは石井俊全の本にあるようなものを理工流と仮にいうことにする.
ベクトル空間の元をとするのではなくと考えることにすればよい.幸いにも加法やスカラー乗法が定義でき,余ベクトルもであるためとしっかり係数体への写像となっているとみなせる.基底や双対基底も取り換え係数と考えれば一つはベクトル空間や双対空間の添字,一方を基底の添字とみることができ考え直したベクトル空間や双対空間の元にしっかりなっていて双対基底の定義も満たす. |
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私が知らないだけでみんなこう解釈していたのだろうか.しかしこの本ではベクトル空間の元はの形をしたものとしているのでやはり上記は著者の考えではないだろう.しかもじゃあやなどは何なのかという話になる.そこで新たな数学的構造を入れることによって理工流を正当化するアプローチもしてみよう.そもそも理工流の定義だともももも全部の元である.つまり理工流の定義だとどういうわけかベクトル空間の中に二つベクトル空間があるといっているということになる.ベクトル空間の構造だけではここから線形汎関数を考えることも難しいし二つを区別することも難しいだろう.そこで双線形形式を入れて次のように定義してみる.
有限次元ベクトル空間とその基底が与えられたとき基底をどのようにとってもを満たすが存在するような双線形形式を考える.を反変基底ということにし元の基底を共変基底ということにする.共変基底が張る空間も反変基底が張る空間もであるが共変基底が張る空間を反変空間,反変基底が張る空間を共変空間ということにする.ここで反変空間,共変空間それぞれとは別々のスカラー乗法を新たに定義してもよい.また基本的にの第一引数は,第二引数はであるように考える.の第一引数をに固定しカリー化してできる線形汎関数を,第二引数をに固定しカリー化してできる線形汎関数をとする.の基底をに置き換えてできるベクトル空間を,の基底をに置き換えてできるベクトル空間をとする.はの双対空間になっており,はの双対空間になっている. |
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を与えて定義したが,,,はに依らない.私は数学もド素人なので上記の定義に穴があったら教えていただきたい.こう定義すれば理工流がある程度正当化されるのではないだろうか.ちなみに僕は物理的な思考に妨げにならなければ数学は適当に理解して物理をやってもいいと思う派で双線形形式と内積の違いがあったり名称がもっとあやふやではあったが結構前は上記のような感じでベクトル空間に2つの双対空間を考えるものだと勘違いしていた。上の定義の双線形形式を内積とするとベクトル空間は内積空間になるが内積をとして
を満たすを基底と対をなすものという意味で「双対」基底というのは自然である.また成分も双対空間の元の成分になっており物理学や工学のものが考えたい「双対」はまさにこれなのではないだろうか.内積は係数体が複素数ならば第一引数について線形性をもたせたとき第二引数は共役線形性をもち内積は双線形形式ではなくなってしまうが,これはのスカラー乗法を変えての共役ベクトル空間とすればよい.共役ベクトル空間とは
となるようなスカラー乗法「」をもつものである.とのスカラー乗法を「」とすると
とすればいいということで,これは通常のスカラー乗法で考えると内積の線形性をもたせていることになる.