本記事のハイライトは
である.
独立変数とその空間の座標とそれに対応する曲線座標系に拡張したクリフォード代数の基底()を考える.一次一形式,ディラック作用素 (上付きは双対基底)として,あるスカラー関数値に関して
が成り立つ.これはナブラと微小ベクトルの内積が全微分であることのちょっとした拡張である.さて化学ポテンシャルやその他の示強性状態量を無視した熱力学はエントロピーと体積を独立変数にとると熱力学第一法則は
となる.ここでという抽象的な二次元曲線座標系を考え,それに対応する基底とディラック作用素を考えると
これにと峡積をとったものが熱力学第一法則になる.つまりこれは等価な式である.これの両辺に楔微分を作用させる.
より
これはマクスウェルの関係式の一つである.偏微分は熱力学でも基本的に可換で接続はクリストッフェル記号なので差で打ち消されて一次の楔微分に接続は現れない.さて他に三式あったがそれらは内部エネルギーをルジャンドル変換しエンタルピーやヘルムホルツエネルギー,ギブズエネルギーに変換することで得られる.しかしその導き方は充分美しいがもっとエレガントなものがある。.そこでという抽象的な二次元曲線座標系を考え,それに対応する基底を考えよう.双対基底の取り換えにより
が成り立つ.先ほどのマクスウェルの関係式の一つ
を式変形すると
この式を
でそれぞれ考えるとマクスウェルの関係式四式が得られる.2次元なので最高次数の基底でありその絶対値はに等しいため、
はヤコビアンが1であることを表している
■
偏微分は可換であるとする.
これはの中身が任意の基底と直交している高次元への法線ベクトルであることを示唆している.単位法線ベクトルをとおき中身を
とすれば
これはオイラー方程式とよばれる.ちなみには第2基本量とよばれ
より
の対称性を持つ.の関係を知りたい.
オイラー方程式の両辺をと内積をとって.
より
よって
この公式は誰かが見つけているだろうが僕が知る限り名前はついてない.この式ははによるということを言っている.さてであるが基底の張る空間の次元よりも2以上高い次元を考えると方向が定まらないだろう.(実は定まり,次の仮定が仮定無しで導けるならぜひ教えていただきたい)そこで次のように仮定する
であるが基底の張る空間のベクトルならと直交しているので
と書けると仮定する.は
より
である.よって
これはワインガルテン方程式とよばれる.(赤文字が真なら先ほどの式と等価である)
まとめると
が基底の張る空間のベクトルならば
さてよく
とされるがこれはどういうことか.これはが基底の張る空間のものによって知覚できないためにに基底の張る空間への射影(はみでた高次元的に垂直なベクトルを0にする作用素)の意味を含ませているといえるだろう.区別するためにこの偏微分を
と表記しよう.接空間の基底がでありその基底が作るテンソル代数のの元に対し
は共変微分と等価になる.
■
最近,マクスウェル方程式の三次のほうである
はを共変成分として計算を行うと自然と共変形式の電磁気におけるビアンキの恒等式が導かれることを確かめ,逆に反変成分で行うと
とリーマン曲率テンソルが出現することを知った.また基底を対象にすると
とリーマン曲率テンソルを三つ足して0になるというあの恒等式と等価な恒等式を導いたのだった.僕はリーマン曲率テンソルの幾何代数的定義みたいなのを期待したのだが恒等的に0なものなのでかなりつまらないと感じた.そこでせっかく幾何代数では基底が各点で定義されているのだから,あの平行移動の微小変化させてから別の微小変化させたものとその別の微小変化を先にしてから微小変化させたものの差でリーマン曲率テンソルを定義するやつを基底で考えてみよう.
今回はこれを使って計算してく.ただしは省略する.
ちなみにこれにとの峡積をとったものがリッチテンソルである.
ディラック作用素とリーマン曲率テンソル
基底の成分は
ちなみにと計算しても同値である.またの偏微分を含む項がキャンセルされたので
である.これらの計算をベクトル場の成分が共変で表されるときで行えば自然にマクスウェル方程式の3次のほうが導かれる(幾何代数と重力場中の物理 - うべの時空代数).
■
n次元曲線座標系,n次元直交座標系が入っていて各点での基底,の基底が定義されているn次元空間について
という量が定義されている.これらには
という関係がある.
よって一般に
の変換則が成り立ち
と形が変わらない.