うべの時空代数

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熱力学の幾何代数化

本記事のハイライトは
\gamma^T\wedge\gamma^S=\gamma^P\wedge\gamma^V
である.
独立変数X^iとその空間の座標(X^i)とそれに対応する曲線座標系に拡張したクリフォード代数の基底(\gamma_i)を考える.一次一形式dX:=dX^i\gamma_iディラック作用素D:=\gamma^i\partial_i (上付きは双対基底)として,あるスカラー関数値F=F(X^i)に関して
dF=dX\vee DF
が成り立つ.これはナブラと微小ベクトルの内積が全微分であることのちょっとした拡張である.さて化学ポテンシャルやその他の示強性状態量を無視した熱力学はエントロピーSと体積Vを独立変数にとると熱力学第一法則は
dU=TdS-PdV
となる.ここで(S,\ V)という抽象的な二次元曲線座標系を考え,それに対応する基底\gamma_S,\ \gamma_Vディラック作用素D_{SV}を考えると
D_{SV}U=\left(\partial_SU\right)_V\gamma^S+\left(\partial_VU\right)_S\gamma^V
\left(\partial_SU\right)_V=T,\ \left(\partial_VU\right)_S=-P
D_{SV}U=T\gamma^S-P\gamma^V
これにdS\gamma_S+dV\gamma_Vと峡積をとったものが熱力学第一法則になる.つまりこれは等価な式である.これの両辺に楔微分D_{SV}\wedgeを作用させる.
D\wedge D\wedge\phi=0, D\wedge A=\partial_iA_j\gamma^i\wedge\gamma^j
より
0=\left(\partial_VT\right)_S\gamma^V\wedge\gamma^S+\left(\partial_S\{-P\}\right)_V\gamma^S\wedge\gamma^V\\0=\{\left(\partial_VT\right)_S-\left(\partial_S\{-P\}\right)_V\}\gamma^V\wedge\gamma^S\\\left(\partial_VT\right)_S=-\left(\partial_SP\right)_V
これはマクスウェルの関係式の一つである.偏微分は熱力学でも基本的に可換で接続はクリストッフェル記号なので差で打ち消されて一次の楔微分に接続は現れない.さて他に三式あったがそれらは内部エネルギーUルジャンドル変換しエンタルピーやヘルムホルツエネルギー,ギブズエネルギーに変換することで得られる.しかしその導き方は充分美しいがもっとエレガントなものがある。.そこで(T,\ P)という抽象的な二次元曲線座標系を考え,それに対応する基底\gamma_T,\ \gamma_Pを考えよう.双対基底の取り換えにより
\gamma^T=\left(\partial_VT\right)_S\gamma^V+\left(\partial_ST\right)_V\gamma^S
\gamma^P=\left(\partial_VP\right)_S\gamma^V+\left(\partial_SP\right)_V\gamma^S
が成り立つ.先ほどのマクスウェルの関係式の一つ
\left(\partial_VT\right)_S\gamma^V\wedge\gamma^S=-\left(\partial_SP\right)_V\gamma^V\wedge\gamma^S
を式変形すると
\{\left(\partial_VT\right)_S\gamma^V+\left(\partial_ST\right)_V\gamma^S\}\wedge\gamma^S=\{\left(\partial_VP\right)_S\gamma^V+\left(\partial_SP\right)_V\gamma^S\}\wedge\gamma^V\\\gamma^T\wedge\gamma^S=\gamma^P\wedge\gamma^V
この式を(S,\ V),\ (S,\ P),\ (T,\ V),\ (T,\ P)
でそれぞれ考えるとマクスウェルの関係式四式が得られる.2次元なので最高次数の基底でありその絶対値は\sqrt{-g}に等しいため、
\frac{\gamma^T\wedge\gamma^S}{\gamma^P\wedge\gamma^V}=1
ヤコビアンが1であることを表している