まず内積の構造をもたない線形空間の行列表現は見聞きしたことがないので,そこから固めたい.線形空間は有限次元を考え係数体は複素数とする.
線形空間があってその元がある.の基底をとしたとき
と分解されたとする.また他の基底との取り換えは
のように書かれる.ここでの線形汎関数の空間,つまり双対空間を考える.行列表現をするときCONSを用いるが内積の構造をもたないので代わりに双対基底を考える.これは
を満たす,基底に対し一意に定まる線形汎関数であり,基底の取り換えに対し
と取り換えられる.線形空間の元は
と係数が抜き取られる.この係数を列に並べたのが基底によるの行列表現である.また同様に双対空間の元
は
を行に並べたのが基底によるの行列表現である.
上の作用素があって
となったとする.これに左から双対基底を作用させると
となる.この係数を行列に並べたのが基底によるの行列表現である.
あと気になるのは時空代数の基底の行列表現はが満たすべき積を行列積で満たすかであるが,とりあえず平坦時空を仮定して
を満たすとする.
DiracスピノルとDirac行列は実は成分表示くさいという話というかアイディア
ベクトルの成分は
とLorentz変換されるとする.またベクトルの基底は,ベクトル自体はLorentz不変で
とならないといけないので
と
を満たす逆の変換がされる.ベクトルの基底を時空代数の基底の計算規則を満たすものと考えるとMaxwell方程式をうまく記述できることが知られている.スカラー場はスカラーなのでそれ以上時空代数がどうとかの議論はあまりないと思うがDirac場はどうなのということをざっくり大雑把に考えたい.まずDirac行列であるが時空代数の(正規直交の場合の)基底と同じ計算規則を満たすので同じものと考えたい.しかし
とLorentz不変な定数行列でこの違いをどうにかしなければならない.そこで思いついたのはDirac行列は時空代数の基底を行列力学によく登場する成分表示して行列した行列表現したものなのではという意見である.そう考えるならば列のスピノルも同様に行列表現したものということになる.量子力学ではCONSを選んで成分表示するが,スピノルの空間で内積や共役が定義できるか定かでないのでHilbert空間と区別するために二重のブラケットを用い,CONSではなくとりあえず双対基底を考える.(行列表現してない)スピノルは
とかかれ,スピノルの成分は
とLorentz変換されるとする.スピノルの基底はベクトル同様,スピノル自体はLorentz不変だとすると
と逆変換される.ここでスピノルの基底の双対基底
を考える.双対基底は
でないといけないので
と成分と同じ変換がされる.これらをつかって行列表現をしたい.スピノルは単純に
と成分表示され,これを番目がでそれ以外の行列
と線形結合させ
と行列表現する.また
とすれば
と,普通のDiracスピノルでよく見るLorentz変換の式が得られる.さて問題の時空代数の基底であるが
と成分表示できたとしよう.これを同様に
と行列表現したとする.これがLorentz変換に対し定数行列であればとりあえずの目標は達成されよう.
目標が達成された.
ちなみに(曲率0の)Dirac方程式は坂本場の量子論に代表される流儀に合うようにすると,Dirac作用素
とスピノル場
を使って
と書ける.ももLorentz不変であり,式に登場する文字全て座標に依存しない.これがDirac方程式と等価であることはこの方程式の両辺に双対基底を作用させて行列表示することで確かめられる.
しかし例えば共役がないのでスピノルの双対をどう定めるのかなど,いろいろありそうだ.
スピノル(没)
※本議論で重力は無視する.Dirac行列はの表現でスピノルも4成分とする.また正規直交基底における計量はとする.
Dirac行列は不変スピノルテンソルつまり1つの座標に関する添字と2つのスピノルに関する添字が打ち消されるLorentz不変な定数行列として扱うのがふつうである.しかしDirac行列を使って電磁場の数式やYang-Mills項を記述すると各文字の定義は省略するが
といった感じでかなり簡潔な記述を可能にする.ここで例えばは4元ポテンシャルであるがDirac行列を基底としておりMinkowski時空の基底にDirac行列の積の規則を与えたとみることができる.となるとDirac行列はベクトルの基底の取り換え規則に従わなければならないとするのが自然である.よってLorentz変換するDirac行列によるDirac場の記述を考えなければならない.これが本題である.
本題に入る前にこれを考える難しさを説明したい.Dirac行列がベクトルの基底の取り換え規則に従うならDirac行列のLorentz変換はスピノルの変換行列で表現できて
となる.具体例は
である.上の式は本義Lorentz変換,下の式は4次元時空の可逆な任意方向の鏡映変換であるが,鏡映変換にはマイナスがついて形が違ってしまっている.本義Lorentz変換があるので形が同じ時間反転と空間反転の変換行列を探せば十分なのかもしれないが時空の次元が4と偶数なので最高次数つまり4次の非0な任意の元を用いて
とすれば鏡映変換を挟んだ形で表現できる.よって
とまとまる.これほど簡潔にまとめることができるのでテンソルのLorentz変換はスピノルのLorentz変換から来ているものだと解釈してもよいのかもしれない.しかし変換行列は一般にHermite行列でもユニタリ行列でもなんでもないためLorentz変換でDirac行列のHermite性が保存されない.Dirac共役を使おうにしてもが変換されて使い物にならない.つまり行のスピノルと列のスピノルの間には従来のような関係はなく別々で考えるしかなさそうなのだ.
さて本題に入ろう.スピノルであるが行スピノルと列スピノルがあってそれぞれ
という変換がされるものとする.ここで注意しておきたいのはがユニタリでないことからわかるようにブラケットにHermite共役などの関係はないということだ(区別するために二重にしておいた).スピノルの基底を用意しよう.行スピノルと列スピノルの基底をそれぞれ
とする.スピノルはこれらの基底の複素数の線形結合で表せて成分は複素数になる.これらはそれぞれ行スピノルと列スピノルの変換に従う.スピノルの基底がスピノルの変換に従うということは
とテンソルと違って(基底に対する係数という意味の)成分はそのままであり,変換後で別のスピノルになる(テンソルは基底と成分両方変換されそれぞれの変換係数の縮約がKrineckerのデルタになることで打ち消されてテンソル自体は不変となる).誤解を招きかねないので補足しておくがここで考えている変換はLorentz変換であり,スピノルの基底の取り換えは別でスピノル自体を変化させないようにテンソルの変換同様基底の変換係数に対し成分の変換係数が打ち消されるように成分を書き換えなければならない.さてスピノルの基底は線形独立ならなんでもいいのだが
という条件を課す.これはLorentz不変な式となっている.この条件によって
と計算される.成分はLorentz不変なのでブラケットはLorentz不変である.さらに
という関係が成り立ち,これもLorentz不変な等式である.またブラとケットの関係に
という関係を持たせる.この条件によって
と計算され
という性質を持つ.このようなスピノルを使ってDirac場を記述しようというのが狙いである.そのためにまずDirac行列の性質を考える.Dirac行列は
を満たし,特に正規直交基底を取ると計量はMinkowski計量となり
を満たす.正規直交基底では簡単な計算により添字が0のDirac行列の固有値はが2つずつでそれ以外はが2つずつであり,トレースはすべて0で行列式はすべて1となる.またDirac行列は一般にHermite性は持たない(有名な表示によってHermite性を持つようにしているだけである).重力は考えないこととするが特殊相対論的な議論でも数式は正規直交基底でなくても成り立つはずなのでDirac行列の正規直交性は仮定しない.Dirac行列は対角化可能であるため中嶋氏が示した定理より
を満たすように固有行,固有列を取ることができ,
を満たす.固有行,固有列はそれぞれ行スピノル,列スピノルとすれば固有値はLorentz不変であるためLorentz変換後のDirac行列の固有行,固有列はスピノルのLorentz変換したものである.またスピノルであるため
と展開することができる.成分の関係は固有スピノルの性質から
が成り立つ.
予想・方針
ここまで書いたがその先が滞って進まないので,予想と方針を書く.
ラグランジアンは
ラグランジュ方程式は中嶋氏が示したものより
Dirac方程式は
のような形になるのではないかと思う.DとBはそれぞれ右,左にある関数に作用するDirac作用素である.方程式はLorentz不変な形になっている.これらがDirac場を表しているか云々の前にラグランジアンが実数になっているかが問題である.質量項はブラケットのここでの定義より自明に実数であるが運動項が非自明である.運動項をスピノルの基底で展開すると
ブラケット部分を計算してみる.
よって
これが全微分項などの不定性を除いて複素共役が等しいことが示せればよい.がわからない.
あと考えた発想はブラとケットの変換に関してHermite共役の類似として
みたいなのを使って探るのもいいかもしれない.LとRにこの共役は持たせられないのだろうかなど考えている.
Dirac行列を時空代数の1次基底とみて本義ローレンツ変換は
と表されることとする.符号はとしは固有値の反Hermite行列,は固有値のHermite行列とする.基本的にDirac表現(のi倍)を考える(カイラル表現だと時空代数の1次基底にならないかも?).
またDiracスピノルの本義ローレンツは
と表されるものとする.ブラつまり行をメインとして考える.(取り急ぎこのケットがどういう共役かは決めないでおく)
さて本記事の目的はDiracスピノルから時空代数を構成する方法を考えることであり,具体的にはDirac行列をDiracスピノルの積や和で表現すことである.
Dirac表現のDirac行列ではDiracスピノルは4成分の複素数となり,4個の複素係数の線形結合で表せばいいためスピノルにおける基底のようなもの4個を探せばいい.疑わしいのはDirac行列の固有列・行である.2個の固有値に対しそれぞれ2個の固有行があるため個数的には適している.さてDirac行列はHermite行列,反Hermite行列であるため固有値,固有行,ブラケットをHermite共役として
と表される.このがスピノルの本義Lorentz変換に従うと仮定して,Dirac行列の本義Lorentz変換が導けるかが問題である.言い換えればがスピノルの本義Lorentz変換を満たしているかという命題に等価である.
よってDirac行列の固有行のHermite共役はスピノルではなく,そもそもDirac行列の固有行がスピノルの本義Lorentz変換を満たすという仮定が間違っている.しかしスピノルの本義Lorentz変換を満たすものとしてこの数式の意味を考えてみる.そこで左からをかけてみよう.
つまり
である.Hermite共役でなくDirac共役を使えばよさそうである.またDirac行列の固有行でなく,の固有行から出発したらよさそうだ.はHermite行列なので固有値,固有行として
これを左からかける.
これを本義Lorentz変換すると,
となる.しかしこれはをLorentz変換してないため変換後のDirac行列に変換前のDirac行列が入っていることになる.Diracスピノルから時空代数を構成することはできるのだろうか.いろいろ考えてみたが求めているものは見つからなかった.
7/3追加
妥協すると
スピノルだけLorentz変換して
をそれぞれとすれば
とできるがこれはもはやの固有列・行でもないしHermite共役でもない.最初の座標を特別視していて相対論的な思想に反しているような気がしてならない.ベクトルの基底としてのDirac行列と不変スピノルテンソルとしてのDirac行列の二つがあってそれらを駆使すればいいのかもしれない.
Dirac行列を時空代数の1次基底とみて本義ローレンツ変換は
と表されることとする.符号はとしは固有値の反Hermite行列,は固有値のHermite行列とする.基本的にDirac表現(のi倍)を考える(カイラル表現だと時空代数の1次基底にならないかも?).
またDiracスピノルの本義ローレンツは
と表されるものとする.ブラつまり行をメインとして考える.(取り急ぎこのケットがどういう共役かは決めないでおく)
さて本記事の目的はDiracスピノルから時空代数を構成する方法を考えることであり,具体的にはDirac行列をDiracスピノルの積や和で表現すことである.
Dirac表現のDirac行列ではDiracスピノルは4成分の複素数となり,4個の複素係数の線形結合で表せばいいためスピノルにおける基底のようなもの4個を探せばいい.疑わしいのはDirac行列の固有列・行である.2個の固有値に対しそれぞれ2個の固有行があるため個数的には適している.さてDirac行列はHermite行列,反Hermite行列であるため固有値,固有行,ブラケットをHermite共役として
と表される.このがスピノルの本義Lorentz変換に従うと仮定して,Dirac行列の本義Lorentz変換が導けるかが問題である.言い換えればがスピノルの本義Lorentz変換を満たしているかという命題に等価である.
よってDirac行列の固有行のHermite共役はスピノルではなく,そもそもDirac行列の固有行がスピノルの本義Lorentz変換を満たすという仮定が間違っている.しかしスピノルの本義Lorentz変換を満たすものとしてこの数式の意味を考えてみる.そこで左からをかけてみよう.
つまり
である.Hermite共役でなくDirac共役を使えばよさそうである.またDirac行列の固有行でなく,の固有行から出発したらよさそうだ.はHermite行列なので固有値,固有行として
これを左からかける.
これを本義Lorentz変換すると,
となる.しかしこれはをLorentz変換してないため変換後のDirac行列に変換前のDirac行列が入っていることになる.Diracスピノルから時空代数を構成することはできるのだろうか.いろいろ考えてみたが求めているものは見つからなかった.
7/3追加
妥協すると
スピノルだけLorentz変換して
をそれぞれとすれば
とできるがこれはもはやの固有列・行でもないしHermite共役でもない.最初の座標を特別視していて相対論的な思想に反しているような気がしてならない.ベクトルの基底としてのDirac行列と不変スピノルテンソルとしてのDirac行列の二つがあってそれらを駆使すればいいのかもしれない.
いろいろ悩んでいたがもうスピノルの変換則自体変えてしまえばいいのではと考えた.テンソルやLorentz変換する基底で考えた時空代数は成分こそLorentz変換するがテンソル自体,時空代数自体は基底と成分の変換係数が打ち消しあい不変である.それと同じでスピノルにも基底と成分にそのような構造を与えてやればいいのではと考えた.スピノルの基底は
を考え
と変換されるとする.そしてスピノルは
と定義されLorentz変換に対し
であるとすることを考える.ここで
を満たす変換係数を考える.は
であるため
を満たす.これにをかける.
まとめると
これより
とすると
が満たされる.
Dirac行列は対角化可能であるため
を満たすように固有行,固有列を取ることができ,
を満たす.固有値はLorentz不変である.固有列固有行はスピノルではなくスピノルの基底の変換に従い,スピノルの基底の取り換えと考えることもできるため
と展開することができる.係数はスピノルの成分ではないためLorentz不変である.係数の関係は固有スピノルの性質から
が成り立つ.
さてDirac方程式であるが正当性は置いといて
を考えよう.これは一文字一文字がLorentz不変であるため方程式がLorentz不変であることは自明である.
は
を考えれば等価である.つぎに
が等価な場合のの関係を考えよう.複素数の足し算掛け算の式に変換すると
最初から重力は考えてないがあとで4脚場とかで変換することを考えてとりあえず正規直交基底を考える.確認した限りカイラル表現やカイラル表現をLorentz変換したものではとは等しいため常に等価である.
さて問題はラグランジアンであるが
の形をしているのではと予想する.これはLorentz不変な形になっている.しかし実数でない.これは虚部だけ抜き出せばいいのか全微分項で実数にできるのか,何か思いついたら教えてください.
双対空間についていろいろ考えてみた
ベクトル空間からその係数体への線形写像を線形汎関数といいその集合を双対ベクトル空間ないしは単に双対空間といいその元を余ベクトル,共変ベクトル,コベクトル,一次形式,1-形式…という. |
---|
これが双対空間辺りの定義で間違いない.要するに余ベクトルとはベクトル引数スカラー戻り値の写像であるということだ.私は全く多読家とは程遠い存在なので偉そうなことは言えないのだがしかし世に出回っている理工学書のうち物理学書や工学書にみられる説明に,ここでは石井俊全の「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」をもとに書くが
n次元ベクトル空間,がある.の基底をからに取り換えるときには,の基底をからに取り換え,これらの間に,が成り立つとき,をの双対空間,をの双対基底,をの双対基底という. |
---|
とある.んんん.これが数学的に同値であろうか.私には全く別物に見える.この文には「双対基底」とあるが双対基底は双対空間の基底であるため最初の定義に基づけばもちろん線形汎関数であり
ベクトル空間とその基底が与えられたとき,その双対空間の部分空間でを満たすもののことを双対集合といい,が有限次元のとき双対集合は双対空間を張り双対基底という. |
---|
と定義される.これも全然違う.ただひとつ石井俊全の定義を擁護する考え方が思いついた.これからは石井俊全の本にあるようなものを理工流と仮にいうことにする.
ベクトル空間の元をとするのではなくと考えることにすればよい.幸いにも加法やスカラー乗法が定義でき,余ベクトルもであるためとしっかり係数体への写像となっているとみなせる.基底や双対基底も取り換え係数と考えれば一つはベクトル空間や双対空間の添字,一方を基底の添字とみることができ考え直したベクトル空間や双対空間の元にしっかりなっていて双対基底の定義も満たす. |
---|
私が知らないだけでみんなこう解釈していたのだろうか.しかしこの本ではベクトル空間の元はの形をしたものとしているのでやはり上記は著者の考えではないだろう.しかもじゃあやなどは何なのかという話になる.そこで新たな数学的構造を入れることによって理工流を正当化するアプローチもしてみよう.そもそも理工流の定義だともももも全部の元である.つまり理工流の定義だとどういうわけかベクトル空間の中に二つベクトル空間があるといっているということになる.ベクトル空間の構造だけではここから線形汎関数を考えることも難しいし二つを区別することも難しいだろう.そこで双線形形式を入れて次のように定義してみる.
有限次元ベクトル空間とその基底が与えられたとき基底をどのようにとってもを満たすが存在するような双線形形式を考える.を反変基底ということにし元の基底を共変基底ということにする.共変基底が張る空間も反変基底が張る空間もであるが共変基底が張る空間を反変空間,反変基底が張る空間を共変空間ということにする.ここで反変空間,共変空間それぞれとは別々のスカラー乗法を新たに定義してもよい.また基本的にの第一引数は,第二引数はであるように考える.の第一引数をに固定しカリー化してできる線形汎関数を,第二引数をに固定しカリー化してできる線形汎関数をとする.の基底をに置き換えてできるベクトル空間を,の基底をに置き換えてできるベクトル空間をとする.はの双対空間になっており,はの双対空間になっている. |
---|
を与えて定義したが,,,はに依らない.私は数学もド素人なので上記の定義に穴があったら教えていただきたい.こう定義すれば理工流がある程度正当化されるのではないだろうか.ちなみに僕は物理的な思考に妨げにならなければ数学は適当に理解して物理をやってもいいと思う派で双線形形式と内積の違いがあったり名称がもっとあやふやではあったが結構前は上記のような感じでベクトル空間に2つの双対空間を考えるものだと勘違いしていた。上の定義の双線形形式を内積とするとベクトル空間は内積空間になるが内積をとして
を満たすを基底と対をなすものという意味で「双対」基底というのは自然である.また成分も双対空間の元の成分になっており物理学や工学のものが考えたい「双対」はまさにこれなのではないだろうか.内積は係数体が複素数ならば第一引数について線形性をもたせたとき第二引数は共役線形性をもち内積は双線形形式ではなくなってしまうが,これはのスカラー乗法を変えての共役ベクトル空間とすればよい.共役ベクトル空間とは
となるようなスカラー乗法「」をもつものである.とのスカラー乗法を「」とすると
とすればいいということで,これは通常のスカラー乗法で考えると内積の線形性をもたせていることになる.
幾何代数によるYang-Mills項
Lie代数と幾何代数の積をとりあえず
と定義する.これはKronecker積とみることができる.とりあえず平坦なMinkowski空間を考え,その幾何代数の基底をとし,ゲージ場に関するLie代数の生成子をとする.ここでゲージ場を
と定義し,非可換ゲージ理論におけるDirac作用素を
と定義する.はLie代数のサイズの単位行列であり,は通常のDirac作用素である.
は重力を無視して幾何代数の基底の微分を0とするとKronecker積における混合積性質と同様に計算できて
となる.行列積の定義できる行列と幾何代数に対して
とwedge積とvee積を拡張する.
成分を計算する.添字の丸括弧は総和を取らないことを意味する.
つまり
が成り立つ.また自身とのvee積は
であるためYang-Mills項は
となる.これは一般の幾何代数でも成り立つ.
非可換ゲージ理論を時空代数で表したいという話
この記事は試行錯誤まで書かれて読みづらいため
https://ubeyuto.hatenablog.com/entry/Yang-Mills
にまとめました。
時空代数は電磁場を記述するのに非常にすっきりして適している.これを重力場中に拡張したのが僕が考えた(ことにしている)接幾何代数である.さて僕はこれを非可換ゲージ理論に拡張しようと思った.とりあえず重力は無視しよう.今までの可換な普通の要するに電磁場は
のような時空代数の物理量や作用素を決めて理論を組み立てていった.さて非可換ゲージ理論ではは生成子に対し
と行列である.時空代数の基底が何かしらの行列で表現されていることを考えるとという量を定義するときKronecker積を考えなければならないだろう.Kronecker積は前の行列の各成分に後の行列をかけるという規則上,左右から演算を考える幾何代数とは記法の相性が良くない.そこで
と書くことにしよう.数式は時空代数成分の行列になる.ゲージ場を
と定義しよう.次はDirac作用素であるが共変微分から出発したほうがよさそうだ.共変微分は
と定義される.はの単位行列である.Dirac作用素は
と定義しよう.これはもはやDirac作用素といえるかわからないが取り急ぎこう定義する.
さてこの記事の目標であるが,Dirac場のかかわる議論は時空代数の基底がLorentz変換に対し1階のテンソルであり,これをDirac行列として使うことを考えると不変スピノルテンソルでないDirac行列によるDirac場の議論が未知であるためできないので,Yang-Mills項を記述することを考えよう.そのために場の強さを試行錯誤して定義してみる.電磁場のアナロジーから
を考えてみる.これはもはや時空代数同士でないため楔積が定義できるかわからないが
として計算しよう.は左から作用するものである.(いつも鏡文字を好んで使うがここではそのコマンドが使えないのでBで代用している)
分子のそれぞれを計算する.
混合積性質を使った.重力を無視しているため基底は微分に対し0であるため普通の混合積のように計算してよい.
よって
これは場の強さとは呼べないだろう.これでも記述できるのかもしれないが,僕が欲しいのは構造定数が表れる項である.共変微分に少し細工をしよう.
共変微分のHermite共役は反対側から作用することにしよう.
基底もまとめて共役取りたいところだが不変スピノルテンソルでないためHermite行列とは限らない.
を計算しよう.
余計な第一項が出てしまったが第三項の成分を計算する.添え字のかっこは総和を取らないことを意味する.
つまり第二項と第三項の成分は
となっておりこれは
となっている.さて第一項を消すことを考えよう.
を試しに考えてみる.
これじゃあどうやっても二次だけを取り出せない(第一項を消せない).つまりの和差だけでは場の強さっぽいものは作れないということだ.
であるため第一項を時空代数で表すこともできない.(この計算を最初にしていればもっと楽だったのにと後悔している)
普通の積で表すことをあきらめて楔積のところでずるをすれば話は済む.
Yang-Mills項もずるすれば
僕が5月に見つけた公式を使った.二次の項は0になる.
https://ubeyuto.hatenablog.com/entry/2021/05/07/130601
Lie代数についてのみ対角和を取ればこのように係数がつかず美しい(?)が厳密には時空代数の基底のサイズの正方行列とKronecker積を取っているため
となる.他の項が時空代数の基底のサイズの正方行列のスカラー倍になることが考えられるため
とLie代数のみ対角和をとるような演算を定義すればすっきりする.これは偏対角和の特殊な場合である.
行列上の幾何代数の楔積はどう数学的に定義すればよいのか.微分形式も似たような手法で行列上の楔積を計算しているがあれは大丈夫なのだろうか.
行列積ABが定義できる行列A, B,幾何代数a, bに対し
と定義すればいいだろうか.A, BのサイズがのときKronecker積はスカラー積となり通常の楔積に対応し,楔積の拡張になっている.